かす汁好きぃ研究所

ITエンジニアをやめることにした

長年続けてきたITエンジニアという仕事ですが、このたび、やめることにしました。

衝動的に決めたわけではなく、これまでの歩みを振り返りつつ、ここ最近の身の回りの状況、仕事の現実、資金繰り、そしてこれからの時代の流れを冷静に見つめ直した結果です。

エンジニア人生のふりかえり

思えば、OSや通信をやりたいという想いから、1992年に大学の工学部を卒業したのが私のエンジニア人生の始まりでした。

それ以来、通信の組み込みソフト、制御系の組み込みソフト、IPv6機器の開発、セキュリティの研究開発、電力系・交通系の機器開発、そして企業向けのWEBシステム開発など、多岐にわたる分野に携わってきました。

当時最先端だったISDN機器の開発に始まり、電子マネー対応の規格提案や機器開発、IPv6、ネットワークセキュリティ、まだ誰もよく分かっていなかった電力系のプロトコル対応、そして誰も詳しくなかった初期のAWSへの対応など――振り返れば、常にその時代の「最先端」の現場を走らせてもらいました。

夜遅くまで、時には徹夜して開発に挑み続けたあの日々は、きっと昭和世代だからこそ許された、泥臭くも充実した熱い時間だったのだと思います。

そんな風に駆け抜けてきたエンジニア人生ですが、今回、区切りをつけることに決めたのにはいくつかの現実的な理由があります。

理由1: 大切な人の日々の生活を支えるため

一番大きなきっかけは、30年来の付き合いがある知人の体調不良です。

毎日のお昼、定刻にインシュリンを注射しなければならないのですが、認知症が進行していることもあり、病院からは「自分自身で打つような複雑な動作は難しいだろう」と告げられました。

ご家族は施設への入所を考えていますが、当人には「自宅に帰りたい」という強い希望があります。施設か、自宅かという意見の相違の中で、当人が自宅で生活を続けるためには、私が定刻に注射を打ちに行くしかありません。

しかし、毎日のお昼に駆けつけて対応するとなると、日中に拘束される通常のITエンジニアとしての仕事を続けることは難しくなります。長年お世話になった大切な人の「自宅で過ごしたい」という想いに寄り添うことを、自分の生活の優先順位として一番に置くことにしました。

理由2: 引き合いの途絶と、ITにこだわっていられない資金の現実

仕事の現場と経済面においても、シビアな現実が重なりました。

50代後半という年齢のせいなのか、AIの普及によるものなのか、あるいは私自身のスキルの問題なのかは分かりませんが、ソフトウェア開発やインフラ構築の依頼が全くなくなりました。

仮に新規の提案をするとしても、これからの自分の年齢的な面や組織的な体制を考えると、責任を持って長期的にサポートし続けられる自信が持てませんでした。10年ほど付き合いのある会社やSES会社からも「関西の市況は芳しくない」と聞き、複数社のSESに登録して「条件にはこだわらない」と間口を広げたものの、2026年5月以降、完全に引き合いが途絶えてしまいました。

売上が途絶える一方で、以前に失敗した別事業の借入返済は毎月容赦なく続いていきます。手持ちの資金が底をつき、最終的には家を売却せざるを得なくなりました。

売却によって一時しのぎはできたものの、根本的な解決にはならず、手元のお金は日々減っていくばかりでした。

もはや「ITエンジニアという仕事」にこだわっている場合ではなくなった、というのが嘘偽りのない現実です。

理由3: AIの進化と、異業種でも対応できる自分をつくるため

そしてもう一つは、これからの時代の流れを見据えた判断です。

AIの急速な普及によって、IT業界は今後さらに厳しい状況になっていくだろうと感じています。よく「AIを使いこなせるエンジニアになれば生き残れる」という意見を耳にしますが、私には、いずれそうした人たちも含めてAIに置き換わっていく未来が見えます。

そうであるならば、AIの影響がまだしばらくは及ばないであろう領域へ、今のうちに舵を切っておくべきだと考えました。

ソフトウェア開発へのこだわりを今のうちに思い切って捨て、全く違う業界や現場であっても適応できる頭と身体を作っておきたい。目の前の切迫した現実と、この未来への直感が合致したことで、エンジニアを辞める決断に至りました。

これからに向けて:新しい現場へ

お昼のインシュリン注射の時間を確保するため、アルバイトサイトで「自分が動ける時間帯」を絞って仕事を探し始めました。

日中を空けるとなると、深夜から早朝にかけての時間帯になります。最初に応募してみたところでは、卸売市場の仕事を提案されました。結局その会社からは連絡が来ませんでしたが、めげずに別のところに応募して決めるつもりです。

もう一つ検討しているのが、深夜の警備の仕事です。ITの世界では50代後半となると案件獲得に苦労しましたが、警備の世界では「50代だとまだ若手」と言われるらしく、業界が変われば求められる価値も景色もこれほど違うのかと新鮮な驚きを感じています。

最先端の技術をがむしゃらに追いかけ続けた30数年間でした。 しかし、過去の実績やこだわりにとらわれて立ち止まっている猶予はありません。

大切な人の生活をサポートしながら、生活を立て直し、新しい頭と体で、次の日々を一歩ずつ泥臭く歩んでいこうと思います。

これまでエンジニアとして関わってくださった皆様、本当にありがとうございました。

#challenge